講座情報

第3期 第5回 実験動物のアニマルウェルフェア

2021年2月16日

講師:徳光 綾子
北海道大学病院臨床研究開発センター 特定専門職員

・世界的な動物実験の基準理念になっている「3R」〔Replacement(代替)、Reduction(削減)、Refinement(苦痛の軽減)〕について説明後、次のような問題点を指摘した

・オランダの研究チームによると、研究に使われた5,590匹の動物のうち、論文などで言及されたのは26%程度。「失敗した研究」を公表しなかった場合、時間やコストの浪費、実験動物の無駄につながる。

・世界中の研究機関でSTAP細胞に関する動物実験が行なわれ、多くの動物が犠牲になった。理化学研究所の小保方氏が行なったような研究不正は、使用された動物の生命も無駄に終わる結果になる。

・動物の使用を伴う実験や試験において、その数を減らすことができる科学的な手法として「動物実験代替法」を追究する学会がある。市民講座も開催されている。動物実験に携わる人は、動物の生命を犠牲にしていることを自覚し、アニマルウェルフェアや3Rに基づいて臨んでほしい。また、科学技術の発達で多くの代替法が開発されており、今後の発展を期待したい。

・参加者からは、「日本の動物愛護管理法には、実験動物をきちんと規制する条文がない。行政も、どこで、どんな動物が飼育されているか把握していない。外からチェックできる第三者機関もない」、「3Rや代替法は道半ば。闇の中というのが現状だ。有名な大学で信じられない飼い方がされている」といった意見も出された。

◎第3期講座を振り返っての感想から
・今までは『動物は生命あるもの』と受け止めていなかったので、勉強になった
・子どものころ、鶏や馬を飼い家計の補助にした。高校生の時にはカエルの解剖もやったが、動物の生命のことを十分考えなかった反省がある(1940年代生まれ)。
・5回参加したが、家畜について全く知らなかったので、これからも勉強を続けたい
・人間の飼育下にある動物について、明確な倫理基準をどこに持っていくのか──今後の課題ではないか。日本人は、自然界に配慮しても、動物には配慮していない。イルカショーに対しても、欧米人との意識の違いがある。
・実験動物であれ、家畜であれ、きちんとアニマルウェルフェアを考えなければならないと思った。