講座情報

第3期 第2回 アニマルライツ(動物の権利)から見た家畜福祉

2020年11月17日

講師:岡田 千尋
認定NPO法人アニマルライツセンター 代表理事

・私たちの使命は、動物の苦しみを効果的に減らすこと。人が動物を管理・利用するという前提に立たず、動物本来の生態・欲求・行動を尊重する。動物への配慮には「飼育状態を改善する」「苦しむ動物の数を減らす」という二つの観点が必要になる

・鶏の「止まり木」は、骨のボリュームと強度を維持するためにも重要。鶏は、餌箱から食べるよりも、地面から自分で探す方法を選ぶ。バタリーケージで飼われるより、放牧のほうが翼や足の骨は丈夫になる(スライド参照)。ウインドレス鶏舎のケージ飼育→開放鶏舎のケージ飼育→平飼い→放牧の順で、サルモネラの検出率は低くなる。

・2015年以降、平飼いや放牧卵を1商品以上置くスーパーが増加。日本でもケージフリーの動きが始まっている。

・ブロイラーの品種改変によって、120日で2㎏程度に成長するものを、40日で成長させるようにした。その結果、脚の皮膚炎や関節の炎症などが多発。先天性異常も発生し、生命倫理の範囲を超えた状態になっている。

・食鳥処理場では、50万羽以上の鶏が生きたまま熱湯で茹でられる(2018年)。その数および割合は増加傾向にある。また、日本では気絶処理をしない食鳥処理場が多い。

・子豚の成育率を見ると、アニマルウェルフェアが高い国のほうが生産成績は良い(日本9頭程度、オランダ12.3頭、デンマーク13.6頭など)。子豚の死亡事故は、拘束飼育ではなく、巣作りをして分娩し、母豚が看護でき、ストレスを減らすことで改善できる。

・世界動物保護協会(WAP)の畜産動物評価では、日本は最低ランク。一方、タイの食品企業CP Foodsは、アニマルウェルフェア団体を入れてのポリシー策定と、AWの改善に取り組んでいる。

・畜産動物の低い福祉は経済の大きな障壁にもなりうる。私たちが目指すのは、ケージフリーやストールフリー、タイフリー、ベターチキンが標準になった社会。すべてがベターになるよう、全体的な底上げを図ろうとしている。動物の苦しみを減らす社会にするには、生産量を減らし、アニマルウェルフェアを普及させることが大切。畜産を残す最後の術がアニマルウェルフェアである。