講座情報

第2期 第4回 アニマルウェルフェアと食の安全・安心 – 牛乳・乳製品を中心に

2020年8月29日

講師:紺野 勝歳
元・雪印乳業株式会社 北海道統括支店 お客様相談室長

1935年、陸別町生まれ。酪農学園機農高を卒業後、牧場従業員を経て雪印乳業に入社し、バターの製造や物流部門などを担当。(一社)北海道発明協会事務局長、(一社)アニマルウェルフェア畜産協会監事などを務めた。

・「食の安全」とは、食品が人間などに危害を及ぼすリスクがあることを前提に、健康影響を及ぼさない範囲まで予防・抑制されている状態をいう。「食の安心」とは、食品の安全性の確保に向けた行政や食品事業者の取り組みについて、皆さんの納得が得られ、信頼が構築されている状態。「安全」を積み重ねることで「安心」へと変わっていく。

・社会から評価される食品企業とは、いかに経営者がビジネス・エシックス(倫理観)を持つかである。企業の倫理観が一般社会の倫理観と同じようになるには、その土台がエシックスにしっかり支えられなければならない。

・食品の品質と安全性の土台は、そこに関わる者の倫理観にかかっている。それは、コンプライアンス(法令遵守)より優先される。

・食品の安全管理は、消費者の体の安全と心(気持ち)の平穏を守るために、「安全と安心」を一対で行なう必要がある。

・牛は胃が4つある反すう動物。食べものが食道から真っ先に入る第1胃(ルーメン)は、成牛だと120リットルもの容量があり、そこで共生している微生物の作用によって、草などを発酵・分解し、栄養素として利用できる形に変えていく。特に乳牛にとって、第1胃の状態は泌乳量や乳質の状態に大きな影響を与えるため、絶えず良好な状態に保つことが重要である。

・実際に牛乳(生乳)を製造するのは乳房の中の乳腺細胞。血液から流れてくる材料をもとに1㎏の牛乳をつくるために、500リットルもの血液の循環が必要である。1日45㎏の牛乳を出す高乳量牛では、乳房内を通る血液量は22.5トンにもなる。

・食品事故の要因は、①ガラスや金属、医師や砂、プラスチックなどの異物混入による物理的な危害 ②洗剤や添加物、機械油などによる化学的な危害 ③温度管理や清掃の不備による生物的危害 ④ネズミや昆虫などによるペスト危害 ⑤日時などの表示ミスによる危害に分類できる。これらの危害から食品を守るためには、「安全」という土台でしっかり支えられていなければならない。