講座情報

第1期 第3回 アニマルウェルフェアって何だろう? part.2

2019年12月14日

講師:滝川 康治
ルポライター / 元酪農家

1954年 下川町生まれ。
名寄農高農科卒業。和光大人文学部中退。ローカル紙記者や酪農業などを経て、91年からフリーに。一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会の生みの親。著書『狂牛病を追う』(七つ森書館)ほか。

・家畜福祉の基本は、動物の習性や生理、生態をよく理解すること。もともと草や木の葉などを食べてきた牛は、第1胃(ルーメン)が発達し、発酵タンクの役割を果たす。猪を家畜化させた豚は、雑食で土中の虫や植物の根・球根を食べるため、硬い鼻先と強大な背筋を備える。知能が高く、群れで暮らし、清潔を好む。鶏も雑食性で、汚れや虫などを落とすため砂浴びを好み、外敵を避けるため夜は木の上に止まって眠る。動物たちをよく観察し、こうした特性に即した飼い方をしていくことが大切だ。

・岩手県内では、「家畜の飼養」「作業・収納」「居住」の3つの空間からなる「南部曲がり家」が建てられ、人と家畜がともに暮らしていた。北海道内の農村部には「獣魂碑」や「馬頭観世音の碑」などが建立され、今でも動物の生命を慈しむ精神文化が残る。そこには、欧州発のAWの考え方とは違う、人と動物との関係がある。

・(公社)畜産技術協会のアンケート調査結果によると、パドックや草地に乳牛を放牧する農場は全体の27%。北海道の調査(2017年度実績)では、約6,700戸の農場のうち36%が何らかの形で外に出す。このうち、放牧酪農家は469戸(全体の7%)にすぎない。

・道内では、1980年に6,600㎏だった1頭あたり年間乳量が、2015年には9,500㎏まで伸びている。これは、濃厚飼料の給与量が右肩上がりで伸びたのが大きな要因だ。高泌乳に起因する乳房炎や繁殖障害などの疾病も増えている。

・同調査によると、日本の肉用鶏(ブロイラー)の坪あたり平均飼養数は53羽ほど。最も多く収容した場合、1羽あたり440㎠とA4サイズよりも狭い。敷料の良否や飼育密度などと関係がある、趾蹠(しせき)皮膚炎と呼ばれる接触性の炎症が発生しやすい。この疾病は、AWの良否を判断する指標にもなっている。

・高齢の乳牛が子牛とともに暮らす、都会っ子の哺乳体験、子牛が直に牛乳を飲む姿が見られる牧場…などに接することで〝癒し効果〟を得られる。

※このほか、消費者としてできるAWなどを考える、「地球生物会議」制作の作品『乳牛と私たち、思いやりのあるダイエット』も鑑賞した。