講座情報
第1期 第1回 アニマルウェルフェアって何だろう?
2019年10月26日
講師:滝川 康治
ルポライター / 元酪農家
1954年 下川町生まれ。
名寄農高農科卒業。和光大人文学部中退。ローカル紙記者や酪農業などを経て、91年からフリーに。一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会の生みの親。著書『狂牛病を追う』(七つ森書館)ほか。
戦後開拓農家に生まれ、物心がつくころには周囲に乳牛や馬、鶏、羊がいた。地元の農業高校では、酪農・畜産の基本や動物との接し方を学ぶ。若いころの一時期、家業だった牛飼いの仕事をした経験も。20年ほど前、「農業と動物福祉の研究会」への入会をきっかけにAWの普及活動に参加するようになり、現在に至る。
・「ウェルフェア」の語源的な意味は、「(人間も動物も)満たされて(wel) 生きている(fare)状態」をいう。アニマルウェルフェアとは「動物の習性や生態、生理を理解し、最終的な死を迎えるまでの飼育過程において、ストレスから自由で健康的な生活ができる状態」にすることである。
・1964年、英国のジャーナリストが工場型畜産の残虐性を告発する『アニマル・マシーン』を出版し、市民の関心を喚起。これを受け、英国政府が設置した委員会が「すべての家畜に、立つ・寝る・向きを変える・身繕いする・手足を伸ばす行動の自由を与えるべき」とする基準原則を提唱した。こうした経緯の中で、1993年に5つの自由(Five Freedoms」の原則が決定された。
・1997年には、EU(欧州連合)の家畜福祉理念を明文化した、アムステルダム条約の「動物の保護および福祉に関する議定書」が発効。「家畜は単なる農産物ではなく、感受性のある生命存在(Sentient Beings)」と定義した。
・「動物福祉」と「動物愛護」「動物の権利」の違いについて説明。円が重なる部分で、ともに考え・行動することが大事と指摘(図を参照)。
・日本の畜産現場の実態やAW畜産を実践する農場をいくつか紹介。普及に向けた今後の課題についても述べた(スライドを参照)